小児泌尿器科とは
尿が作られる腎臓、尿が体の外に排泄される際の通り道である尿路(尿管、膀胱、尿道)、そして精巣や陰茎、子宮・腟などの内・外性器に疾患をもつ小児を対象に診療いたします。 成人の泌尿器科と診察する箇所は同じでも検査や治療の方法が異なります。 また、お子さまの泌尿器に関することで、お悩みがある、気になる症状がみられるという場合は、お気軽にご相談ください。
このような症状がみられたらご相談ください
- 幼児期を過ぎても夜尿症(おねしょ)が治らない
- 尿検査で血尿やたんぱく尿を指摘された
- おしっこの色や臭い、回数などがおかしい
- おちんちんの皮が剥けない(男の子)
- おちんちんを痛がる、痒がる(男の子)
- おちんちんの先が赤く腫れている(男の子)
- またの部分を痛がる、痒がる(女の子)
- おしっこが出なくて、痛がる など
小児泌尿器科でみる主な代表的疾患
夜尿症
幼児期を過ぎても夜間、睡眠中に無意識に排尿することを夜尿と言い、5~6歳を過ぎても続くおねしょは、夜尿症として診療の対象になります。実は小学生の中でも10~20人に一人はおねしょをすると言われており、その症状に悩むお子さんは決して少なくはありません。夜尿症の治療としては、夜間尿量を減らす、および夜間膀胱容量を増やすということが重要になります。夜間尿量を減らすには、抗利尿ホルモンを使用します。また、夜間膀胱容量を増やす対策には、夜尿アラームや抗コリン剤を用います。
包茎
おちんちん(陰茎)の亀頭部分が包皮で覆われたままの状態が「包茎」です。なお、手で包皮をむく(亀頭に沿って引っぱる)と亀頭の一部でも露出する場合は「仮性包茎」ですので、心配する必要はありません。
乳幼児にみられる包茎のほとんどは「生理的包茎」であり、幼児・学童と成長するにつれ次第にむけてくるものです。新生児は大抵が手を使ってもむけない包茎状態ですが、乳幼児の頃には包茎と思われても次第にむけてきます。17歳頃には、ほとんどの方で包皮がむけ、心配の無い状態になると言われます。
ただし、包皮口(輪)が狭いために包皮がむけない場合もあります。これは「真性包茎」と言い、成人まで続くような場合は手術などの治療が必要になることもあります。
おちんちんの痛み
「おちんちんが痛い」とお子さんが言っている場合は、亀頭包皮炎が考えられます。
症状としましては、おちんちんの皮が赤く腫れていて、触った時やおしっこの時に痛がります。そのほか、おちんちんの先からは黄色い膿が出てくることがあります。これは亀頭と包皮の間に常在菌が繁殖して炎症を起こしている状態です。
包皮と亀頭が癒着している乳幼児男子の陰茎は包皮をめくることが難しく、その間に恥垢が溜まりやすく、不潔な状態になります。そこに表皮ブドウ球菌やレンサ球菌が感染して炎症を起こします。こちらの症状は、小学生以下の子どもでよくみられ、中学生以上になると減少していきます。
治療では、包皮を向いて膿を出し、消毒した後に、抗生剤の軟膏を塗ります。再発予防のため、包皮を清潔にすることも大切です。なお、真性包茎により、亀頭包皮炎を何度も繰り返す場合は、包茎手術を行うこともあります。
子どもの頻尿
お子さんのトイレに行く回数が多かったり、その間隔が明らかに短い場合も受診をお勧めします。その目安とは、日中の排尿回数が8〜10回以上で、間隔が2時間より短い場合です。なお、子どもの頻尿の原因のほとんどは、「膀胱炎」か「心因性の頻尿」と言われています。
子どもの膀胱炎
大腸菌などの細菌が尿道口から膀胱に侵入して増殖し、膀胱内に炎症が生じる疾患が膀胱炎です。細菌感染で膀胱や尿道が刺激を受けると、排尿中枢も刺激されますので、膀胱に尿が十分に溜まる前に尿意を催し、頻尿症状が起こるのです。そのほかにも、排尿時痛や高熱といった症状が出ます。2~3歳以上のお子さんであれば、排尿時に痛いしぐさを見せたり、痛みを訴えることもあるかと思います。
膀胱炎を診断するにあたっては尿検査を行います。尿中の白血球が増加していたり、多少の出血を伴ったりしていれば、ほぼ膀胱炎と診断されます。治療では抗生剤を内服し、多くの場合数日でよくなります。膀胱炎が完治することで、頻尿症状も解消します。
心因性の頻尿
何らかの原因によって精神的にひどく緊張したり不安を募らせたりして、何度も何度も頻繁にトイレに行くようになる状態が心因性からくる頻尿です。繊細でナイーブなお子さんに多いようです。
トイレが近いという以外は、これといった症状が見られず、尿検査をしても細菌感染の兆候は見られません。また、夢中になって遊んでいる時など、何かに集中しているとトイレに行かなくなるのが特徴でもあります。
そのため、気持ちがトイレに向かないように、他のことで気を紛らわすようにしながら様子を見ていれば、頻尿がそのうち解消されることもあります。なお、頻尿が長期間にわたって続くのであれば、抗コリン薬を用います。この薬は、膀胱の過敏性を抑え、膀胱をリラックスさせる効果があります。
心因性の頻尿は、適切な治療を受けながら数週間ほど様子を見ていれば、ほとんどの場合は治まり、子どもが成長するに従い次第に起こらなくなっていきます。
陰嚢水腫
小児の中でも乳幼児に多い疾患で、陰嚢内(精巣の周囲)に水が溜まる病気です。そのため、陰嚢が膨らんだり、左右の大きさに違いが生じたりします。通常、痛みが伴うことはありません。 陰嚢水腫は、成人でも発症しますが、小児の陰嚢水腫は「交通性」と呼ばれ、本来なら閉じてしかるべき腹膜の先が閉じなかったことにより、腹膜と陰嚢の間に交通性(つながっている様子)が生まれ、腹水が漿膜に溜まってしまうことが原因です。 治療を行うにあたっては、自然に治ることが多いため、しばらくは経過を観察します。ただし、3歳頃になっても治癒しない場合や、鼠径ヘルニアを合併する場合、また本人が気にしていたり、歩きにくかったりする場合などは手術療法を行います。